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最近話題の大麻由来の成分CBDオイルって何?効果・効能をエビデンスベースで徹底解説!

みなさんこんにちは、ここ最近、大麻草由来のCBDオイルという言葉を見聞きする事が増えてきたのではないでしょうか? CBD(カンナビジオール)は、カンナビノイドと呼ばれる大麻の成分のひとつであり、向精神作用がなく、鎮静作用を持つ事から、近年、医薬品やサプリメントの原料として注目を集めるようになりました。

MarketResearchFutureによると、2018年の世界のCBD製品の市場は約3000億円であり、2026年までに年間125%の勢いで成長すると予測されています。現在のCBD製品の市場は、78%をアメリカが占め、ヨーロッパが続きますが、日本でも、CBDオイルメーカーのエリクシノール社が表参道駅構内に大々的に広告を出したり、大手百貨店の美容コーナーやサプリメントコーナーでも数多くのCBD製品が扱われるようになるなど、その存在感を増しています。

とは言え、大麻由来の成分と言われると「何となく怪しい」と感じたり、CBDオイルを万能薬のように語る誇大広告を目にしたという人も多いかも知れません。そのため今回は、CBDオイルについて、大麻の歴史や薬理作用と共に、エビデンスベースで紹介したいと思います。

【大麻の歴史とその評価】

大麻草は古来より、医療やリラクゼーションや衣類原料から宗教の儀式など、様々な用途で用いられてきました。2世紀に中国で発行された「神農本草経」には、生薬のひとつとして紹介されており、古代インドでも、バラモン教の儀式典礼である「アタルヴァ・ヴィーダ」にて、幸福の源として大麻草が言及されるなど、社会と深い繋がりがあった事が知られています。日本でも、天皇陛下の即位式・大嘗祭で使われる「麁服 (あらたえ)」や神社のしめ縄として大麻が利用されてきた他、戦前は大麻煙草として流通していた歴史があります。

大麻の持つ鎮痛作用や鎮静作用は古くから知られていましたが、陶酔感や高揚感などの精神作用を持つ事から、20世紀頃から世界中で規制されるようになります。日本でも、第二次世界大戦のあと、占領下にあった1946年にGHQの要請を受けて、大麻取締法が制定されて現在に至ります。そのため、今日の日本では、いかなる場合も大麻を所持する事、医師が処方する事、医師の処方を受ける事が禁止されています。

(画像:医療大麻の真実)

1963年にイスラエルのラファエル・メコーラム博士により、世界で初めてカンナビノイドの主成分のひとつであるTHC(テトラヒドロカンナビノール)が同定されます。THCは、数多く多幸感、陶酔感などの向精神作用を持つ事から、後に厳しく規制される事となりました。

しかし、1992年に、人間の体内で、エンド・カンナビノイドという大麻のカンナビノイドによく似た成分の神経伝達物質が発見された事で、風向きが変わる事になります。人体にカンナビノイドと類似する生理活性物質と、そのメカニズムが明らかになるのに伴い、大麻由来のカンナビノイドが注目を集め、それに関する様々な医学研究が行われるようになったのです。

【エンド・カンナビノイド(内因性カンナビノイド)とは?】

それではエンド・カンナビノイドシステムとは、どのようなモノなのでしょうか。エンド・カンナビノイドシステムとは、一連の生理活性作用を持つ脂質シグナル伝達系のひとつであり、様々な神経伝達の調節を行っています。エンド・カンナビノイドシステムは、アラキドン酸由来の脂質(アナンダミド、2-AG)からなるエンド・カンナビノイド(内因性カンナビノイド)と、それに対応する受容体(CB受容体)から構成されています。

1992年代に発見されたエンド・カンナビノイド(内因性カンナビノイド)は、大麻に特有な成分であるカンナビノイドに分類される構造である事から、この名がつけられました。

大麻由来のカンナビノイドも、エンド・カンナビノイド(内因性カンナビノイド)と同様にCBレセプターに結合して生理活性作用を示す事から、エンド・カンナビノイドシステムの失調ないし、カンナビノイド欠乏が疑われる疾患に対して、大麻が注目を集めるようになったのです。

エンド・カンナビノイドの受容体にはCB1、CB2の二種類があります。CB1は脳内に広く分布しており、運動制御や情動、痛み、食欲の調整津、報酬系の制御、恒常性の維持、各種ホルモンの調節などに関わっているほか、膵臓、肝臓、消化管、骨格筋、心臓、そして生殖器にも発現しています。CB2は免疫系に発現しており、その制御に関わっている事が分かっています。

(画像:terravidahc.com

エンド・カンナビノイドは、神経活動依存的に、神経シナプス後部ニューロンにて産生され、シナプス前終末のCB1受容体を活性化する事で、各種の神経伝達物質の放出を一時的に抑制する事が解明されており、このメカニズムは、逆行性シナプス伝達抑制と呼ばれ、各種神経の過剰興奮を抑制し、神経伝達を調整しています(*1)。

エンド・カンナビノイド人体の様々な臓器に広く分布し、様々な神経伝達を調節する事から、このシステムに不調をきたす事で、様々な症状を引き起こします。エンド・カンナビノイドシステムの機能低下に関係する疾患は、約250種にものぼるという報告もあります(*2)。

 

【カンナビノイドの欠乏と医療大麻】

エンド・カンナビノイドシステムの研究が進むにつれて、大麻由来の医薬品の開発も進みました。まだまだ、解明されていない事の多いエンド・カンナビノイドシステムですが、慢性的なストレスによりその働きが阻害される事が、数々の研究から明らかになっています。

現在、医療大麻は、イギリスやカナダで全国的に合法化されている他、アメリカの約30州で合法化されています。医療大麻の製剤には、エピディオレックスやサティベックスなどがあります。

エピディオレックスは、レノックス・ガストー症候群、トラベ症候群によるてんかん発作に対する治療効果が認められ、2018年11月に米国FDA により、医薬品として正式に認可されました。エピディオレックスは、THC成分を含まず、CBDを主成分とする製剤であり、2019年3月から、日本でも聖マリアンナ医科大学にて臨床試験が開始されてた事で話題になりました。

サティベックスは、多発性硬化症(MS)患者の神経因性疼痛や痙縮などの症状の緩和を目的に開発され、現在世界30か国で販売されています。サティベックスは、多発性硬化症以外の様々な神経因性疼痛に対しても臨床試験が行われています。

エピディオレックスの認可を伝えるCBSのニュース

これ以外にも、大麻由来のカンナビノイドは、様々な疾患や症状に対して、その有益性が期待されておりカナダの保健省は、現時点で13の疾病に対して大麻が有効であると表明しています。

他にも、2015年6月に、英国ブリストル大学のホワイティング博士らの行ったシステマティックレビューによると、79の臨床試験 (被験者数6462人)を統計処理し、評価した結果、慢性疼痛および痙縮の治療のために、カンナビノイドの使用を支持する中等度エビデンスがあり、オピオイドの使用に伴う吐き気、HIVによる体重減少、睡眠障害、トゥレット症候群らの症状緩和との関連を示唆する、低度のエビデンスがあったという結果となりました(*3)。

また、2017年、全米医学アカデミー(the Health and Medicine Division of the US National Academies)は、成人の慢性疼痛(とくに神経因性疼痛)、化学療法の加療中に誘発される吐き気と嘔吐、そして多発性硬化症の患者に見られる痙縮に対して、大麻の使用を支持する十分なエビデンスがあると結論づけています(*4)。

【カンナビノイドが、痛みや不安を抑えるメカニズム】

まだまた、研究途上であり、今も様々な疾患への効果が期待されている大麻由来のカンナビノイドですが、慢性疼痛の緩和、不安障害、睡眠障害に対する、カンナビノイドの作用機序については、かなりの事が分かってきているので、紹介したいと思います。

そもそも慢性疼痛とは、MSDマニュアルによると、以下のように定義されます。

「慢性疼痛とは,3カ月間を超えて持続もしくは再発する,または急性組織損傷の回復後1カ月を超えて持続する,または治癒に至らない病変に随伴する疼痛である。原因としては,慢性疾患(例,癌,関節炎,糖尿病),損傷(例,椎間板ヘルニア,靱帯断裂),多くの原発性疼痛疾患(例,神経障害性疼痛,線維筋痛症,慢性頭痛)などがある。様々な薬剤と心理学的治療が用いられる。」

MSDマニュアル

炎症の原因となる因子が除去されずに、炎症が続くと、炎症細胞の病巣への浸潤、細胞内シグナル伝達の調節不全、そして、炎症細胞の過剰反応が起こります。こうなると、原因物質が除去されて組織が修復された後も、痛みが持続する事となります。

また、疼痛状態の持続は、中枢神経の痛覚を認知するシステムにも影響を与えます。持続する痛みは、痛覚の中枢である視床の活動に影響を及ぼす事が分かっており、視床の体性感覚野が持続的に興奮し易くなる事で、僅かな刺激に対しても痛みを認識する状態に陥る事が知られています(*6)。さらに、慢性疼痛は、患者の生活を著しく低下させ、うつ病の要因にもなります。そのため、心理的要因や社会的要因も重なる事で、治療は難航すると言われています(*5)。

エンドカンナビノイドシステムは、炎症時に放出される各種炎症メディエーターの活性を抑えて中和する作用がある事が、数々の前臨床試験および臨床試験により分かっています。

炎症メディエーターとは、搊傷された組織、および炎症部位に浸潤した白血球や肥満細胞、マクロファージなどから放出される生理活性物質の事で、これらの物質が痛覚神経を刺激する事で痛覚を引き起こすのですが、カンナビノイドは、炎症メディエーターであるサイトカイン(インターフェロン、インターロイキン)の放出を抑制する事で、痛覚刺激の緩和に関与します(*7)。

また、先ほど紹介したように、人体にあるエンドカンナビノイドシステムには、逆行性シナプス伝達調節というメカニズムがあります。様々な神経と神経の間隙のシナプスと言われる部位に発現するCB1受容体は、このメカニズムにより神経の過剰な興奮を抑え、調整します。 痛覚を司る神経に発現するCB1受容体が神経原性の痛覚刺激を軽減する事も、様々な臨床前試験および臨床試験で分かっています(*4)。

シナプス逆行性シナプス伝達調整のメカニズムに関しては、東京大学の谷村あさみ氏らによる「内因性カンナビノイドによる逆行性シナプス伝達調節のメカニズム」という論文で詳細に解説されているので、興味のある方はそちらも参照してください。

また、エンドカンナビノイドは、痛覚を司る神経以外にも、情動や恐怖、トラウマの中枢である偏桃体にも発現しているため、同システムの失調は、不安障害やPTSDなどを誘発します 。オーストラリアのモナッシュ大学で行われた研究によると、生後21日のラットを社会的に隔離すると、そうでない群と比較して、海馬におけるCB1受容体レベルが上昇する事が報告されており(*8)、また、ドイツのヴィルヘルム大学の研究チームは、ラットに恐怖刺激を与えた翌日には、側坐核の中枢核でCB1受容体の発現量が上昇すると共に、逆行性シナプス伝達抑制がより強く起きると報告しています。 (*9)

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これらの一連の研究は、恐怖やストレスの負荷がかかった時に、エンドカンナビノイドが活性化し、神経の過剰な興奮を抑える事によって、体内環境を維持している事を示唆します。その意味では、エンド・カンナビノイドシステムは、ストレスや恐怖から身を守るために生物が獲得した防御反応機構であると言えるのかも知れません。

臨床実験でも、不安障害や睡眠障害に対するカンナビノールの投与を支持するエビデンスが集まってきており、2019年に、コロラド大学にて行われた症例対象研究によると、47人の不安障害を持つ被験者47人と、睡眠障害を持つ被験者25人に対して、25㎎のCBDオイルを一か月間投与したところ、不安障害を持つ被験者の79.2%、睡眠障害を持つ被験者の66.7%で、それぞれ症状の緩和が認められたと報告されています。

【サプリメントとしてのCBDオイル】

さて、日本でもエピディオレックスの臨床試験が始まったとは言え、これだけの多くのエビデンスが蓄積しており、先進国で、大麻が医療現場で使われるようになった事を鑑みると、日本では、まだまだ大麻に関する研究が進んでいるとは言えませんし、一般の人達に正しい知識を伝える専門家も少ないのが現状です。

そんな中で、カンナビノイドの主成分であるCBDには向精神作用はない事から、日本でも合法であり、医師の処方箋なしで、サプリメントとしての使用が可能です。

医学博士のピーター・グリーンスプーン氏は、ハーバード大学医学部のサイトに寄稿した記事にて、世間に出回っているCBD製品の品質を保証するための、適切な法規制がされてない事を指摘し、また、さらなる調査・研究が必要であるとしながらも、CBDは、慢性疼痛、睡眠障害、不安障害の管理に対する選択肢になりえると述べています。

実際に日本でも、慢性疼痛や神経痛、不眠症の症状緩和の他に、疲労やストレスのコンディショニングを目的として使用される事が多いようです。 筆者も、緊張型頭痛と不眠の管理のためにCBDオイルを使っており、個人的にはかなり緩和されたように感じます(あくまで個人の感覚であり、プラシーボ効果にすぎない可能性もあります) しかし、CBDオイルに関しては、誇大広告も多く、詐欺的な商品も散見されるので、購入の際には注意が必要です。

カンナビノイド研究の世界的権威として知られるイーサン・ルッソ博士は、GREEN ZONE JAPANインタビューにて、CBDだけをてんかんの治療に使う際には、体重1㎏あたり25㎎以上の量が必要な場合もある事、CBD製品の精製の際に農薬などの有害物質も濃縮され混入する可能性もある事、そして、CBDだけでなくTHCなど、他のカンナビノイドも併用する事で相乗効果(アントラージュ効果)が得られる事などを指摘しています。

ルッソ博士の言うように、特定の疾患に対して十分な効果を得るには大量のCBDが必要になる場合もあります。しかし、CBDオイル製品には、粗悪品も出回っており、用法・用量や摂取方法に関しては、まだまだ十分なエビデンスがないので、医師の管理外で自分の判断で大量に摂取するのは危険です。また、CBDはカンナビノイドの成分のひとつでしかないので、他のカンナビノイドも含まれた大麻製剤とは薬理作用が異なる事にも留意する必要があります。

日本でも、CBD製品が増えてきており、より多くの人々の関心も集めるようになりましたが、まだまだ、解明されていない事も多く、日本では専門家も少ないのが実情です。CBD製品の購入を検討する際は、ラベルを注意深く読み、製造元のしっかりとした商品を選ぶ事が重要になります。

CBDを利用する際には、過大評価も過小評価もせずに、あくまでサプリメントとして、自分にあった体調のコンディショニングに役立てるのが良いでしょう。今後研究が進み、安心した市場が整備されれば、ストレスの多い現代社会の救世主としてCBDが脚光を浴びる日が来るのかもしれません。

【参考文献】

*1) 谷 村 あ さ み,橋 本 谷 祐 輝,狩 野 方 伸 「 内因性カンナビノイドによる逆行性シナプス伝達調節のメカニズム 」生化学 第83巻 第8号,pp.704―714,2011

*2) International Classification of Diseases 9 – CM 1996 Chronic Conditions Treated With Cannabis Encountered Between 1990-2004 Tod H. Mikuriya, M.D.

*3) Whiting PF, Wolff RF, Deshpande S,Cannabinoids for Medical Use: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA. 2015 Jun 23-30;313(24):2456-73. (pubmed)

*4) Natascia Bruni,Carlo Della Pepa Simonetta, Oliaro-Bosso Cannabinoid Delivery Systems for Pain and Inflammation Treatment Molecules. 2018 Oct; 23(10): 2478. (pubmed)

*5) Fukumoto M, Ushida T, Zinchuk VS et al : Contralateral thalamic perfusion in patients with reflex sympathetic dystrophy syndrome. Lancet 354 : 1790-1791, 1999

*6) 日本神経治療学会監修 標準的神経治療 慢性疼痛 神経治療 Vol. 27 No. 4(2010) (jsnt)

*7) Di Marzo V, Bifulco M, De Petrocellis L. The endocannabinoid system and its therapeutic exploitation.  Nat Rev Drug Discov. 2004 Sep;3(9):771-84. (pubmed

*8) Robinson, S.A., Loiacono, R.E., Christopoulos, A., Sexton, P. M., & Malone, D.T.(2010)Brain Res.,1343,153―167.

*9)Kamprath, K., Romo-Parra, H., Haring, M., Gaburro, S., Doengi, M., Lutz, B., & Pape, H.C.(2010)Neuropsychopharmacology,36,652―663

*10)Scott Shannon, MD,Nicole Lewis, ND, Cannabidiol in Anxiety and Sleep: A Large Case Series, Perm J. 2019; 23: 18-041. (pubmed)

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