こんにちは。皆さんは、グリコホサートというものを聞いたことがありますか?
グリコホサートは除草剤などに含まれている成分で、日本で現在使われていますしかし、このグリコホサート。近年、その安全性や発がん性を巡って、世界的な議論が引き起こされているのです。
しかし、唯一グリコホサートの規制緩和をしている国が日本なのです。そのため、今回は、除草剤に含まれるグリコホサートが本当に安全なのか探っていきたいと思います。
グリコホサートを主成分として含むラウンドアップ
グリコホサートというのは、グリシンとリン酸から合成される物質で、アメリカのモンサント社が1974年に発売した「ラウンドアップ」という除草剤の主成分です。日本でも日産化学株式会社が「ラウンドアップ マックスロード」という商品をライセンス販売しています。
主にトウモロコシ、大豆、綿などを育てる際に使用されています。ラウンドアップは、1974年から世界中で販売されており、アメリカ・日本を中心に160か国で使用されていました。ジェネリック製品もたくさん出ていることから、長らく除草剤としては世界シェア1位の商品でした。
グリコホサートは、非選択性の除草剤で、雑草でも作物でも枯らしてしまう強力な除草剤ですが、短時間で土の中の微生物によって分解されるため、植物以外には作用せず環境問題もないとされていて、安全性に対する問題は発売されてからの20年間ほどはほとんど報告されていませんでした。
l ラウンドアップが危険視されたきっかけ
きっかけは2015年、国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer)がグリコホサートを5段階中危険度が上から二番目の Group2 (ヒトに対しておそらく発がん性がある) に分類した事です。これにより、世間のラウンドアップに対する評価が一変する事となります。
(※: IARCによる発がん性の分類は、人に対する発がん性があるかどうかの「根拠の強さ」を示すものです。物質の発がん性の強さや暴露量に基づくリスクの大きさを示すものではありません。)
AFP通信によると 、除草剤「ラウンドアップ(Roundup)」をめぐる米国内における訴訟は、2019年の7月から10月までの間に4万2700件も行われたと報道しています。
訴訟大国のアメリカといえど、とんでもない件数ですね。
IRACの発表が追い風となり全米各地でラウンドアップに対する訴訟が急増する事となります。ラウンドアップ(Roundup)」が原因でがんを発症したとして米カリフォルニア州の夫婦が賠償を求めた訴訟で、昨年、米農薬大手モンサント(Monsanto)に対し、約20億ドル(約2200億円)の支払いを命じる判決が下された事は、その賠償額の大きさと相まって大きなニュースとなりました。
グリコホサートの世界各国の規制
しかし、アメリカの環境省(EPA)は、グリコホサートを「ヒトにガンを引き起こさない化学物質」に分類しているように、各機関や政府によってグリコホサートの規制は様々です。
それでは各国の対応を見てみましょう
【アメリカ】カリフォルニア州がグリコホサートが州の発がん性物質リストに追加された他、 ニューヨーク州やフロリダ州、シカゴ市のあるイリノイ州などが同様の対応を取る。
【オーストラリア】2019年7月、国民議会(下院)でグリコホサートの使用を全面禁止する法案が可決された。
【フランス】2019年1月、食品環境労働衛生安全庁がラウンドアップの販売許可を取り下げ販売禁止にした。
【ベトナム、スリランカ】グリコホサートの輸入を禁止。
また、国際産婦人科連合の発生環境衛生委員会は、 グリコホサートが胎盤を通過して、胎児に危険が及ぶ可能性があるとして、2019年7月31日、世界規模でのグリコホサート禁止の勧告を発表しています。https://www.figo.org/statement-glyphosate-removal
一方で、グリコホサートの危険性を否定する機関も。
【欧州食品安全機関(EFSA)】2015年11月、グリコホサートにがんや先天異常などを引き起こす可能性を否定した。
【FAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)】2016年5月、「人が食事を通じてグリホサートを摂取しても、それでがんになるとは考えにくい」との見解を示した。
何故か規制緩和をする日本
さて、このように世界中で、その危険性が指摘され、議論を呼んでいるグリコホサートですが、日本政府は、不可解なようにも思える対応を取っている事が物議を醸しています。
厚生労働省が食品、添加物等の規格基準を発表しているのですが、2017年12月25日の改正で、グリコホサートの基準が増えた食物が数多く見受けられました。食品によって規制が上がったり下がったりしていますので一概には言えませんが、ものによっては大幅な規制緩和ととれるものもあります。
【グリコホサートの残留基準値】
小麦 5.0ppm から30ppm(6倍)
ライ麦 0.2 から30 (150倍)
そば 0.2 から 30 (150倍)
小豆類 2.0 から 10 (5倍)
てんさい 0.2 から 15 (75倍)
ひまわりやゴマの種子、なたね、オイルシード 3~400倍
その安全性や危険性に関しては、各専門機関によって相違はあるとしても、世界的には規制を強化の流れであるにも関わらず、何故か日本ではその残留基準が大幅に緩和されています。
日本において、どの程度のロビー活動があったのかは定かではありませんが、もともとモンサント社のロビー活動のやり方には、米国でも多くの批判がありました。
そのため、今回の不可解な規制緩和に関しても、米国の大企業の在庫処理場として、目をつけられた日本という見方をする声もあります。
今回は、グリコホサートという除草剤が発がん性をもち、ヒトに対して有害かもしれないということをお伝えしました。
今後各機関や国で様々な発表がなされてくるとは思います
各機関や国によって規制方針は異なるものの、日本だけが大幅な規制緩和をしたのは解せないという方も多いかも知れません。
実は、モンサント社のランドアップを巡る訴訟はこれからも続いていきます。今後、各国の司法はどのような判決を下すのか、そして、国際機関はラウンドアップに対してどのような科学的評価を下していくのか、今後も注目していく必要がありそうですね。
