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「炎上中のHAKOBIYAは危険な違法アプリなのか?」元幹部自衛官という異色の経歴の社長を独占取材

皆さんは、海外旅行に行きたくても、金銭的な理由や、仕事の都合で断念したという経験はないでしょうか?

日本人の海外旅行者数は、年々、増加傾向にあり、各種LCC(格安航空券)も数多く生まれていますが、いまだに海外旅行をする際の一番の障壁は、金銭面だと言われています。

ネット上で炎上し物議を醸したアプリHAKOBIYAとは

今回紹介するのは、「旅行が仕事になるアプリ、HAKOBIYA」。このアプリは、海外の製品が欲しい現地の人と、その国への旅行者をマッチングする越境ソーシャルショッピングができるサービスで、今年7月にアンドロイド版がリリースされると、話題を呼び、現在、登録ユーザー10万人を超え、ベトナムのグーグルプレイストアでトレンドランキング1位を獲得。先日、アップルストアでもβ版がリリースされました。

(HAKOBIYAを紹介するベトナムのインフルエンサー達)

しかし、先日ITmediaで 海外旅行のついでに“おつかい”で稼ごう 「HAKOBIYA」が日本での展開に本腰 という記事が投稿されると、その過激なネーミングから物議を呼び、Twitter では「麻薬を運ばされるのでは?」、「犯罪に巻き込まれる」と大炎上する事となります。

とは言え、中には、東京大学大学院工学系研究所教授の土屋武司氏のように、サービス名には苦言を呈しつつも、ビジネスビジネスモデル自体は評価する声も

(Newspicks)

これを受けてITmediaは25日、HAKOBIYAの運営会社の「PicUApp」(東京都北区)の声明を掲載すると共に、国土交通省の「HAKOBIYAのビジネスモデルが貨物利用運送事業法に抵触していない」という見解を記した後続記事を掲載する事となります。

 ITmedia ビジネスオンライン編集部は、国土交通省総合政策局物流政策課物流産業室の担当者に、HAKOBIYAのビジネスモデルが貨物利用運送事業法に抵触していないかどうかを聞いた。担当者は、渡航者が旅客として依頼された商品を運ぶのであれば、特別な登録・許可を受ける必要はないという見解を示した。

「HAKOBIYA」のサービスに関わる法的問題やリスクをどう考えればいいのか

リリース直後から急成長した一方で、物議を醸したHAKOBIYAですが、実際にどのようなサービスで、どのような懸念が炎上の火種となったのでしょうか。

今回は、そんなHAKOBIYAのCEOであり、元幹部自衛官という異色の経歴をもつ田中悠斗さんに、サービスの概要やビジョン、そして、越境ソーシャルショッピングによる物流革命について語って頂くと共に、炎上を生んだ人々の懸念にも回答して頂きました。

はたして、HAKOBIYAは単なる危険な違法アプリなのでしょうか?あるいは、そこには人々が気づいていない社会的インパクトが秘められているのでしょうか?

そもそも「HAKOBIYA」ってどんなアプリ?

(©株式会社PicUApp )

まずは、HAKOBIYAのサービスの概要を説明します。HAKOBIYAユーザーは、欲しい海外製品の依頼を投稿します。その国に旅行に行く予定のある別のユーザーが、その投稿を見て依頼を引き受けると、旅行前に商品を代わりに購入して、現地で受け渡しをします。

(©株式会社PicUApp )

依頼者は欲しい海外製品をいち早く入手することができ、旅行者は、トランクケースの空きスペースを活用して手数料として報酬を得る事ができます。

また、危険物・輸出入禁止物のフィルタリングや、一般の旅行者にとって分かりにくかった簡易関税を推計するシステムでも国際特許を出願中だと言います。

(©株式会社PicUApp )

現在、HAKOBIYAは日本とベトナムでサービスを展開していますが、ベトナムでは、大手ECサイトで海外製品を買おうと思ったとしても、日本のように物流サービスが整備されているわけではなく、紛失や遅延が頻発するため、安心して海外の製品を買える環境がありません。加えて輸入通関コストや配送コストの高さも越境ECの障壁となっていました。

インターフェースはシンプルで軽快な使い心地

炎上中の「HAKOBIYA」CEOを独占取材

それでは、株式会社PicUApp 代表取締役CEO 田中悠斗氏の独占インタビューをご覧ください。HAKOBIYAが目指す世界観や今回の炎上について語って頂きました。

【株式会社PicUApp 代表取締役CEO 田中悠斗氏】
1992年生まれ。14歳の時に、Gnutella P2Pを活用したシステムを作成し、売却。 防衛大学校卒業後、幹部自衛官として各種任務に従事。2018年、幹部自衛官を退職。 「日本しか知らないものは、日本をも知らない」をスローガンに、世界中を飛び回り、国内・海外複数社の経営・技術開発に参画。同年、株式会社 PicUAppを創業(Twitter:@yut0_tanaka)

‐はじめにHAKOBIYAのサービスを始めたキッカケについて教えて下さい。

HAKOBIYAの共同創業者の中川賢史朗は、元々、ベトナムで貿易の仕事をしていたのですが、かねてより、中川から輸出入における制限とハードルの高さや、貿易環境が十分に整備されていない現状を聞いていました。

また、私は世界各国を訪れる事が多いのですが、日本のように、適正価格で、早く、確実に海外の商品が手に届くという環境が整備されている国は、むしろ稀であり、私は海外に行く度に、友人に商品の購入を頼まれていました。

このような経験から「旅行者が移動時に商品を運べば、当日や翌日に商品を届けることが可能ではないか、お土産の要望を使って物流の問題を解決できるのではないか」と着想して、中川と共にこのサービスを始める事となったのです。

HAKOBIYAが見据えるマーケットとは?

-どのようなマーケットにアプローチしていくのでしょうか?

世界的に中間層の呼ばれる人達の増加に伴い、可処分所得は増えており、越境ECや海外旅行の市場は、世界的に成長しています。( 世界の海外旅行者数が14億人突破、2年前倒しで予測を達成、2030年に18億人に拡大へ ―世界観光統計(2018年推計)


出典:日本政府観光局(JNTO)

しかし、 世界最大級のECサイト「Amazon」でさえも、商品の2/3は国際発送に対応していないのが現状であり、大手配送業者やECの配送コストは上昇傾向にあります(参考:アマゾン、米で物流も爆速で「破壊」中 既に半分を自社配送)。

そのため、FacebookやWechat上では、越境ソーシャルバイヤーと呼ばれる人達が日本の量販店や免税店などで動画配信ライブを行い、買い物の代行をオファーするというグループが数多くあります。

中には、40万人規模の参加者がいる越境ソーシャルバイヤーのFacebookグループもあり、そこでは「今日本の百貨店の●●の化粧品コーナーにいるけど買ってきて欲しいものがある人はいますか?」といった投稿が掲載されており、ある種の経済圏が形成されているのです。

また、日本でハイブランドの商品を購入する外国人旅行客の約6割は転売目的だと言われており、そのような人達も広義でのソーシャルバイヤーと言えます。

私達のサービスは、購入依頼と旅行者の荷物の空きスペースを繋げるサービスであるため、ソーシャルバイヤーが行っていた事に対して、適正なマッチングと決済面で透明なお金の流れを提供するプラットフォームを作っているのです。

どんな人に支持され?どんな商品が流通しているの?

‐ユーザーの反響はどうでしょうか?

ユーザーさん達が最も喜んでくれた事は、依頼者と旅行者の間で信頼関係が生まれる事と、モノを買う事の楽しさを再発見できるという事でした。

一般的に人間関係の信用は、0から1にするのが難しいと言われていますが、 一度、HAKOBIYAによって依頼が成立すると、依頼者と旅行者の間で信頼が生まれ、コミュニケーションが活発化します。

そのため、商品を届けた後に、現地の観光ガイドをしてあげたり、一緒に食事にいったりと、ユーザー間で交流が生まれたり、その後、友達になったするケースも多く見られました。何の脈絡もなく、違う国の人に話かけて友達になるのは難しいですが、このようなキッカケがあれば、一気にそのハードルが下がります。  

また、依頼を受けた旅行者は、買いものをする時に、常に新しい発見があります。「何故、この人はこれが欲しいのだろう?」「この国ではこんな商品が人気なんだな」というように、ただのお使いとして買い物をするのではなく、そこには、新たな発見や楽しさがあるのです。

-実際にどんな商品が流通していますか?

ベトナムから日本への依頼は、電化製品、化粧品などが多く、圧力なべ、アニメグッズなどもやり取りされています。逆に、日本からベトナムへの依頼は、ベトナム限定のジッポーや香水などのローカライズド商品の他、ベトナムコーヒーなどがあります。

(©株式会社PicUApp)

炎上に対する運営会社の見解

‐先日ITmediaの記事がTwitterで炎上しました。中には「麻薬を運ばされるのではないか」という声がありましたが?

私達の説明不足であったり、メディアの取り上げ方、そして、物議を醸すネーミングだという事は、炎上の火種のひとつにあったと思います(笑)。

表面上の情報だけで条件反射する人が一定数出てくるのは自然な事だと思いますが、「私達が目指す世界観や、HAKOBIYAによってどのように世界が変わっていくのか、どのような経済圏が付随して生まれてくるのか」といった事を考えていく上で、批判があることは非常にありがたい事です。サービスに少なからず興味を持ってくれているということなので。

「麻薬を運ばされるのでは?」といった声もありますが、そもそも違法薬物などは投稿に上がらないようにしていますし、旅行者は、自分で依頼を選び、依頼を受けて自分で商品を購入するので、知らない人から荷物を渡されて運ぶといったものではありません(笑)。

-一般の旅行者が適切に関税の申請を適切に出来るのかといった懸念がありましたが?

手荷物で商品を海外に持っていく際には簡易関税率が適応され、商品ごとに個別に税率が規定されています。そのため、HAKOBIYAのサービスを使うかどうかに関わらず、本来、すべての旅行者は、お土産などを持ち込む場合、中身の商品がどのような税率が適応されるのか調べている義務があります。 わかりにくいし、面倒臭いですけどね(笑)。

この際、税関のホームページを参照する事なのですが、どの商品にどれだけの税率が適応されるのかという事については、規定が抽象的であったり、分かりにくいという問題がありました。

そのため、HAKOBIYAでは、商品ごとに、どのような関税が適応されるのかを分かりやすく提示するためのデータベースを開発中で、関税の申請が分からなくて怖いという方々に対して、それを分かりやすくする仕組みを作っています。

旅行者の方が「そもそも気をつけらければならなかったけど、なおざりになっていた事を、より気をつけやすくする」という仕組みはこれまでなかったので、それに対する解決策を提示していきたいと考えています。

「HAKOBIYA」の目指す世界観

-最後にHAKOBIYAのビジョンについて教えて下さい。

まず、ユーザーサイドの話とすると、世界中の人が、違う国の商品を欲しいと思った時に、翌日、すぐ手に入るという世界を作る事が私たちのビジョンです。そのために、HAKOBIYAにより、越境ECを旅行と組み合わせ、一連のフローを設計する事で、世界中で信用形成の連鎖を生み出していきます。

現在、世界中の年間旅行者数は13億人に上り、その数は年々、増え続けています。旅行という行為を考えた時、非日常の未知なる体験を求めて移動する事で、単なる移動という行為が旅行に変わります。その意味では、人間が人間であり続ける限り旅行という行為はなくなりません。

しかし、どこの国でも、海外旅行に行く時の一番の障壁は、金銭的な都合だと言われています。ハコビヤで最適な報酬を設計し、その障壁を取り除く事で、思い立った時に、すぐにどこか他の国に行けるという環境を作る事で、人々の人生の選択肢を増やす事に繋がればと考えています。

また、私達は、グローバルコマースを促進するというビジョンもあります。これまでは、外国人顧客のニーズを正確に捉える事は難しいと言われてきました。

外国人が日本の小売店で商品を買う際、約60%は、自分のためではなく、知人や友人にあげるために購入しているというデータもあり、どの商品が、いつ、どれだけ売れたかという事は分かっても、実際にそれを利用するエンドユーザーの顔が見えずらい、見えていないという課題があったのです。

HAKOBIYAには、各国の各地域で、どの様な商品の需要が増大しているかといった商品流通データが蓄積されていくので、 国を超えた商品流通データを可視化する事で、各企業様に、商品開発や、現地での適正価格の算出、越境でのプロモーションに活用して頂けます。

例えば、20代向けの化粧品を作って売ろうと思っても、日本の人口は年々減少しています。一方で、海外を見れば、ベトナムの平均年齢は約28歳、カンボジアにいたっては約24歳で、両国共に購買力は年々上がっています。

ターゲット層が最も多く、刺さりそうな国でマーケティングした方がパイは多いですよね。そして、様々なコストをすっ飛ばして、現地ニーズを元に、日本の店で購買が発生していきます。

私たちは、「どの国で、何が欲しがられているのか」といった国を超えた商品流通データを可視化し、様々な角度で活用して頂く事で、今よりもグローバルマーケティングが容易に、そして当たり前になっていくと考えています。

依頼者、旅行者はもちろんの事、様々な法人やプラットホームでWin-Winな関係が構築できる未来はどんどん近づいていると確信してます。

まとめ

いかがでしたか?元幹部自衛官という異色の経歴を持つ田中悠斗氏の仕掛けるHAKOBIYA。

各種LCCの登場や、世界的に中間層の可処分所得が増大した事により、海外旅行の市場が増加傾向にある一方で、大手ECの海外配送のコストは上昇傾向にあり、多くの国では未だに欲しいものが欲しい時に手に入る環境が整備されていないという点に着目し、それに対して、越境ECの需要と旅行者を繋げる事で、 一連のフローを設計した点は非常に面白いと思います。

また、「一般の旅行者が正確に関税手続きを行えないのでは?」という懸念に対して、そもそもHAKOBIYAを使うかどうか以前に、手土産荷物の関税申請は複雑で難しかったという現状を指摘し、それに対するソリューションを提供していくという返答には、明確な問題意識を持っている事が伺えました。

さらに、 国を超えた商品流通データを集積する事で、グローバルマーケティングに活用するという構想には、ビッグデータの活用に携わる人にとって示唆的なメッセージが含まれています。

とは言え、まだまだ始まったばかりのHAKOBIYA。彼らの描くビジョンをどこまでカタチに出来るのか。今後も様々な論点で賛否両論を巻き起こすであろうHAKOBIYAの動向には注目していきたいと思います。

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Seemy編集部
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