皆さんの家の冷蔵庫の中にマーガリンは入っていますか?
マーガリンはバターよりも安価で柔らかい質感なので、ご家庭でよく使用されている食品です。
しかし、最近は社会的に健康意識が高まりつつあり、「マーガリンは体に良くない、あれはプラスチックだ」とマーガリンを避けるべきともいわれています。
その原因は「トランス脂肪酸」という成分。
私たちの健康を害するといわれ、現在WHOから摂取を控えるようにと勧告が出ています。
では、マーガリンを食べなければ安心なのでしょうか?
実はそんなこともなくて、マーガリン業界もいろんな対策をしていますし、逆にもっと避けるべき食べ物なんかもあることがわかりました。
今回は私たちが避けるべき「トランス脂肪酸」についてお伝えしていこうと思います。
そもそも脂肪は人体でどんな役割を果たすの?

<脂質のはたらき>
脂質には色々な働きがあります。
- 私たちの体を構成している(皮膚など)
- エネルギー源になる
- ビタミンAやEなどの吸収を助ける
という私たちの体に欠かせない重要な栄養素です。
脂質というのは総称で、コレステロールやリン脂質、油脂などをまとめて脂質と呼んでいます。
この油脂を構成しているのが脂肪酸とグリセリンという物質です。
脂肪酸というのは簡単にいうと長く大きい分子のことで、その長さや形によってそれぞれに名前があり、いくつかに分類されます。
例)オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、パルミチン酸など。
この中でリノール酸やα-リノレン酸は体内で作ることが出来ないため、食事からとる必要がある「必須脂肪酸」と呼ばれています。
脂質は私たちの体に必要な大事な栄養素でもあるんですね
トランス脂肪酸って何?

脂肪酸には分類があります。分子の中に二重結合があるかないかで不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸に分けられます。
飽和脂肪酸は液体のものが多く、サラダ油やごま油など植物由来もものが多い
不飽和脂肪酸は固体のものが多く、牛や豚肉などの脂身など動物由来物が多いです。
さらに不飽和脂肪酸は二重結合の向きが、シスなのかトランスなのかに分けられます。
このトランス脂肪酸というのがマーガリンに多く含まれていると言われているものです。
トランス脂肪酸の作られ方

トランス脂肪酸は油脂を加工して生じる工業的なものと、天然に生じるものの2種類の作られ方があります。
天然では、
- 牛や羊の胃の中にいる微生物によってシス型からトランス型に変化していくという方法。
工業的なものだと、
- 液体の飽和脂肪酸に二重結合を作ってあげることで固体の不飽和脂肪酸にしていく方法。水素を添加する反応なので水素添加とも言います。
- 油脂を精製するときに脱臭したり不純物を除去するために高温加熱した時に、シス型がトランス型に変化する。
- 揚げ物用の油を高温加熱した際にシス型からトランス型に変化する
自然界にはシス型が多く存在していますが、人工的に不飽和脂肪酸を作るとトランス型の割合がどうしても増えてしまいます。
シス型のみを作るという技術は開発されていない現状です。
(参考:maff.go.jp)
トランス脂肪酸が体に悪い理由

トランス脂肪酸は私たちの健康に大きく害を及ぼします。
- トランス脂肪酸は動脈硬化の原因になる
- 悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を増加させる
(出典: fsc.go.jp)
このような報告が諸外国で多く報告されていることから、世界保健機構WHOがトランス脂肪酸の摂取量について勧告を出しています。
トランス脂肪酸の摂取量は、最大でも一日当たりの摂取エネルギー量の1%未満とするよう
health.euroafrica.org
世界のトランス脂肪酸に対する動き

<一日当たりのトランス脂肪酸の摂取量>
アメリカでは、20歳以上の大人で平均5.8gで摂取エネルギーの2.6%
(出典:health.gov)
EUでは、男性で1.2~6.7g、女性で1.7~4.1gで摂取エネルギーの0.5~2.1%と0.8~1.9%との報告があります。
(出典:efsa.europa.eu)
また日本では、2010年に学術誌で公表された調査論文によると男女ともに平均1.7gで摂取エネルギーの0.7~0.8%でした。WHOの定めた1%を下回っていますよね。
ですが、1%を超えている割合は女性で24.4%、男性で5.7%で、特に都市部在住の30~49歳の女性が多かったのです。その原因として、お菓子の摂取が多かったことが挙げられています。(出典:ncbi.nlm.nih.gov,fsc.go.jp)
厚生労働省でも平成21年に策定された「日本人の食事摂取基準(2010年版)」でこのような発表がされてます。
(引用:日本人の中にも欧米人のトランス脂肪酸摂取量に近い人もいる。このため日本でも工業的に生産されるトランス脂肪酸は、すべての年齢層で、少なく摂取することが望まれる。)厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2010 年版)」
さらに、脂肪分が多い食事を摂りがちなアメリカでは2018年にトランス脂肪酸の使用が原則禁止されました。
マーガリンメーカーの工夫

トランス脂肪酸が話題にもなり、マーガリンの生産量は年々減ってきています。
しかし、トランス脂肪酸が多いのはよくないとマーガリンを作る食品メーカーもわかっているため、トランス脂肪酸が作られてしまう水素添加をなくした商品が開発されてます。
2018年2月1日に、メグミルクが家庭用のマーガリン類とショートニングのすべての商品で、トランス脂肪酸を多く含む油脂の使用を取りやめると発表しています。
(参考:nikkei.com)
また雪印の「ネオソフト」、J-オイルミルズの「ラーマ」、明治の「コーンソフト」
といった大手メーカーのマーガリンでもトランス脂肪酸軽減の対策をしっかり行ってきています。
トランス脂肪酸への規制は広がりつつあるのでちゃんと商品を選んで買いましょう。
マーガリンよりも気を付けたい食べ物

マーガリンだけでなく、他にも水素添加により製造されるものがあります。
ファットスプレッド:油脂に水などを加えて乳化したもの。油脂含有率が80%未満のもの。(80%以上がマーガリン)マーガリンに比べて油分やカロリーが少なくチョコレートや果実で風味付けされているものもある。
ショートニング:マーガリンと比べてほとんど水分を含んでおらず、クリーム状の食用油脂。サクサクとした食感になるためお菓子の材料として使用される。
(参考:j-margarine.com)
これらを原材料とした食べ物にはトランス脂肪酸が含まれています
食パン・菓子パン
ケーキ
ドーナツ
ビスケット
スナック菓子・米菓子
即席中華麺
揚げ物など
欧米では主食がパンだったり、ピザやケーキなどを頻繁に食べていたりします。さらに牛肉などもよく食べていることから、工業的に作られたトランス脂肪酸だけでなく、天然の食材からもトランス脂肪酸を多く摂取していることになります。
そのような食生活が原因で欧米ではトランス脂肪酸を摂りすぎてしまっているのです。
日本人は主食でお米を食べますし、牛肉よりも魚などを食べる食生活でした。そのためトランス脂肪酸を摂る機会があまりなかったのです。
現代では食の欧米化により、気づかぬうちにトランス脂肪酸を摂取する機会が増えてしまいました。
先ほどの日本人の統計を見ても、クッキーやケーキを食べながらティータイムを楽しんでいそうな大人の女性で摂取量が多くなっていました。
マーガリンを避けるというよりも、それを含むお菓子類・揚げ物類をさけることの方が大切なんですね。
代わりになる食べもの

そうはいっても、ケーキやパン、お菓子が食べたいときってありますよね。
そういうときはバターを使用しているものを選びましょう。
<筆者のおすすめ>
スコットランドの老舗メーカーWalkersのショートブレッド

(参考:shokuhin.com)
小麦粉、バター、砂糖、食塩だけで出来ており、おやつにちょうどいいかもしれません
木村屋のシンプルパン
このシリーズにはマーガリン・ショートニングが不使用となっています。
食パン・菓子パンなどを買う時は裏の成分表を見ると、マーガリンやショートニングが入っているかどうかわかるので、買い物の時に気を付けて見てみてはいかがでしょうか。
まとめ

トランス脂肪酸が話題になってから、アメリカをはじめ、世界中でトランス脂肪酸への規制や注意喚起が行われています。
日本でも規制とまではいかないものの家庭用でも業務用でも食品中のトランス脂肪酸の含有量は減少傾向にあります。
普通に整った食生活をしていれば大きな問題にはならなそうですが、もしあなたが偏った食生活をしているのなら、トランス脂肪酸の害を大きく受けてしまうので注意しましょう。
お菓子を手に取った時、この話を思い出してちらっと成分表を見て健康意識を高めてもらえたらうれしいです。
