みなさんはセロトニンついて聞いた事はありますか?セロトニンは、脳内で働く神経伝達物質で、交感神経と副交感神経の働きを調整しています。気分や精神の安定のほか、消化機能などに関与しており、幸せのホルモンと呼ばれる事もあります。
セロトニンを分泌するセロトニン神経は、ストレスに弱いため、慢性的なストレス下に置かれるとセロトニンが十分に分泌されず、うつ病や気分障害を誘発すると考えられています。
ストレスの多い現代社会にて、ストレスマネージメントの観点からも重要視されるホルモンであり、不足すると様々な症状が現れます。今回は、そんなセロトニンについて解説すると共に、セロトニンの分泌を増やす習慣についても紹介します。
セロトニンの働き

セロトニンは、主に以下のような役割を担っています。
・サーカディアンリズムを整え、良質な睡眠を促進
・食欲の促進
・学習と記憶の促進
・ポジティブな気分の維持
しかし、セロトニンが欠乏すると以下のような症状が生じます。
・不安になる、気分の消沈、抑うつ
・攻撃的になる、衝動的になる
・眠れなくなる、疲労感
・食欲の減衰
・吐き気、消化不良
・甘いものや炭水化物の多いものを欲しがる
このように、セロトニンの分泌量を調整するSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)のような医薬品が開発されていますが、日常の習慣を変える事でも、分泌量を増やせる事が分かっています。それでは、セロトニンの分泌量を増やす習慣について紹介していきましょう。
セロトニンを分泌する3つの習慣

1.トリプトファンの多い食材を食べる
セロトニンは、体内で合成されるため、直接摂取する事は出来ませんが、必須アミノ酸の一種であるトリプファンという、セロトニンの前駆物質を含む食材を取る事が良いとされおり、トリプトファンは、鶏肉、サーモン、ナッツ類の殻などに豊富に含まれています。
しかし、実際は、トリプトファンを豊富に含む食材を取ればよいという程、単純ではありません。脳には、脳血液関門(Blood-Brain-Barrier)という、血液から運ばれて来る物質の流入を制限して、脳細胞を守る機構があります。脳血液関門は、脳に有害な物質をフィルターすると共に、必要な物質を、必要な量だけ選択的に通しています。
ナッツの殻は、トリプトファンを豊富に含んでいますが、他の必須アミノ酸も豊富に含まれているため、それらの必須アミノ酸が先に脳血液関門を通過してしまい、結果的にトリプトファンの吸収効率が悪くなるという事が知られています。
しかし、あらたな研究によると25g程の炭水化物を同時に摂取する事で、トリプトファンを効率的に脳に送る事ができる事が明らかになりました(*1)。
Health Lineによると、以下のような組み合わせは、脳内にセロトニンを送るに最適だと紹介しています。
・パンとチーズ、もしくは鶏肉
・オートミールとナッツ
・サーモンとお米
・プラムやパイナップルとクラッカー
ご自身の好みに合わせて、日々の食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。
2.一定のリズムを刻む運動
東邦大学名誉教授の有田秀穂名誉教授は、セロトニン神経を活性化させるためには、一定のリズムを刻む運動が重要であると語ります。
同氏はその具体例として、以下の3つを挙げています。
・ウォーキング、ジョギング
・ガムの咀嚼
・腹式呼吸
なお、これらのリズム運動をするときは、漠然とやるのではなく、静かな場所で、集中する事が重要であり、3か月ほど続ける事で、セロトニン神経が構造的に変わり、セロトニン神経の分泌の多い脳に変わっていくと言います(参考:Medicalnote)。
3.太陽の光を浴びる
セロトニンは、日光の少ない冬に低下し、夏に上昇する事が知られています。寒冷地など日光の少ない生活環境は、気分障害の要因として知られていますが、これもセロトニンの分泌量の低下が関与しています。そのため、セロトニンを十分に分泌をするためには、太陽の光をしっかりと浴びる事が重要です。(*2,*3)
毎日、10分から15分間しっかりと日光を浴びる事で、セロトニン神経の活性化が期待できます。セロトニン神経は、紫外線をカットしても活性化するので、強い光を浴びる時や、紫外線が気になる方は、紫外線をカットするサンスクリーンなどを着用しても問題ありません。
まとめ

今回は、幸福のホルモンと呼ばれる、セロトニンについて紹介するとともに、日常生活でセロトニンを増やす習慣についてまとめました。
わが国では、2000年以前は、20万人程だったうつ病患者の数も、2015年には100万人をこえたと推計されており、ストレスもその原因のひとつだと考えられています。
ストレスの多い現代社会を生きる上で、しっかりとストレスをマネージメントする事は非常に重要ですが、残念ながら日本では、適切なストレスマネージメントの方法は、まだまだ普及していません。 ストレスや苦難は耐え忍ぶ事が正しいという社会通念がある事も、より状況を悪化させているのかもしれません。
セロトニンを活性化する事で、ストレスを適切にマネージメントして、心もカラダも元気な日々を引き寄せましょう。
参考文献
*1) https://www.longdom.org/open-access/nutrient-and-stress-management-2155-9600-1000528.pdf
*2) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3779905/
*3) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3779905/
